被せ物の治療について
歯の被せ物の種類についてご説明する前に、歯の被せ物をするということで、歯にとってどのような影響があるのかを、まずはご説明したいと思います。
歯の被せ物をするということは、いわゆる歯の治療を受けるということです。この歯を修復する治療では、残念ながら、どんなに治療しても、元の健康状態に戻すことはできません。
逆に、歯は、治療する度に、本来の歯が少しずつ減ることになります。これを繰り返すと、やがて神経に達します。神経を抜いた歯はもろく、最終的に歯そのものを抜かなければならないという事態になりがちです。
治療の必要性
歯に虫歯がある場合、今の虫歯をこれ以上悪化させないために、歯科治療はもちろん必要です。しかし、その虫歯治療は、虫歯になる前の歯の状態に戻ったということではないのです。
治療によって、歯の痛みが取れたり、食べ物が噛みやすくなりますが、歯を削って詰め物や被せ物をする修復治療をした場合には、境目や段差に汚れがたまりやすくなります。つまり、再び虫歯になるリスクが高まっているのも現実です。
このような現実を踏まえ、歯の被せ物などの歯科治療を選択する際には、歯科医師と良く相談して、「今後の再発リスクを減らす」ということも視野に入れ、治療法を選んでほしいと思っております。
保険診療と自由診療の違いは？
日本では保険証さえあれば、「いつでも」「誰でも」必要な医療サービスを受けることができる国です。これは「国民皆保険（かいほけん）制度」があるからです。ところが、歯科医療の中には、「保険のきかない治療」いわゆる「自由診療」もたくさんあります。
インプラントの治療などでは、１００万円単位のお金がかかることもあります。ここで、少し何にどのくらいの費用がかかるのか、整理してご説明いたします。
日本の医療保険は、「病気の治療のため」に使えるものとなっています。治療であれば、皆様は医療費の１～３割負担となりますが、例えば人間ドック、美容整形など、予防のためや審美目的のものは、一部の例外を除いて自由診療となり、全額自己負担となります。
歯科診療の場合ですと、削る、詰める、抜くといったむし歯治療は、基本的に保険の範囲で治療ができます。被せ物や義歯を作る場合、使用する素材の種類や、歯の位置で保険適用にならないこともあります。その他、審美目的の歯列矯正やホワイトニングは、保険はききません。
選ぶ基準について
治療することになった場合、保険外の治療の方が良いのか？患者さんは迷うことと思います。特に、何十倍の価格差を提示された場合は、保険診療とどこが違うのか、説明を求め、十分納得してから治療に望みたいことでしょう。
診療については、自由診療が向く人もいれば、保険でできるもので問題ない人もいます。これは、歯の状態だけでなく、生活習慣や年齢など、さまざまな理由から判断をしていきます。
患者さんも、治療のメリット、デメリットについて理解したうえで、歯科医師と一緒に選んでいくものと考えています。各治療の合う合わないについては、歯科医師と十分なコミュニケーションをとり、正しい情報を得て判断していくことが重要と思っております。
被せ物の場合、保険診療では、使用できる素材や治療法に限りがあります。そのため、新しい治療法や素材、高度な技術を使えないことが多いです。しかし、自由診療の場合は、制限がほとんどありません。
歯科医師としては、数多くの治療方法や、素材の中から、皆さまに合うものをご提案することができます。保険診療から自由診療まで、さまざまな選択肢の中から、虫歯リスク・再発リスクの低い治療法を厳選することが求められると考えています。
治療した歯を長持ちさせるには
一度、虫歯治療を経験した方は、再度治療になることは避けたいと思うことでしょう。また、被せ物を行う場合に「銀歯は嫌だなぁ」と思ったからは、「入れ歯になりたくない」という感情もお持ちのことと思います。
再発リスクを防ぐには、歯も歯ぐきも健康に保ち続けるほかありません。そのためには、定期的な歯科医院での口腔ケアと毎日のセルフケアが重要です。
繰り返しになりますが、被せ物などを行うと、治療前に比べて虫歯や歯周病になりやすいといわてれいます。被せたクラウンと歯の継ぎ目は、汚れがたまりやすく最も虫歯になりやすい箇所となります。これまで以上に丁寧に歯を磨いてほしいと思います。
歯科医院での定期検診では
「毎日丁寧に歯を磨いていれば大丈夫」と思うかたもいらっしゃると思いますが、皆様の歯を守るためには、歯科医院での定期的なチェックも重要です。加齢などによって、歯ぐきの状態は変化します。
歯ぐきが下がり、その部分から虫歯になることもあります。虫歯も歯周病も、ごく初期の段階であれば、軽い処置で済みますが、症状が悪化していれば、被せた歯を取り外したり、別の歯を削ったりする必要がでてきます。
冒頭でも説明したように、一度進行した虫歯を元に戻すことはできません。皆様のお口の状態に応じた処置や毎日の歯磨きを実施して、お口の中の状態をより良い状態に維持するためには、歯医者さんでお口の中を定期的にチェックしてほしいと思います。
当院の定期検診は、１回３０分から１時間のご予約をお取りして、歯周ポケット・口腔内写真・染め出しなど、皆さまの状態にあわせた十分な検査、丁寧な歯のクリーニングを行っていきます。皆様と一緒に、これから先の虫歯ゼロ、歯周病ゼロを目指していければ嬉しいです。